西洋医学の診断と治療
西洋医学では、患者様の症状を聞き、血液検査、尿検査、レントゲン検査などをおこない、胃潰瘍であるとか膀胱炎であるといったふうにまず病名をつけ、その 病気に対する治療を行ないます。 この治療はどの患者様についてもほぼ同じ内容のものです。 科学的な根拠に基づいた治療が多く、多くの方に効果がありますが、人間はひとりひとり体質が違 うので治療に対する反応も異なり、いまひとつ症状が改善しない方も多く見受けられます。 また様々な検査をおこなっても診断がつかない(病名がわからない)ことは日常診療上よくあることですが、この場合は西洋医学で治療することは困難です。
漢方の考え方、治療
一方、漢方診療では薬を処方する際に、病名を決めるといった過程はありません。患者様の訴え、体格、肌の質、身体的診察(特に腹部の診察が重要) などから、体質や体の素地を判断し、その方に最も適した漢方薬を選択し処方します。例えば、西洋医学ではアトピー性皮膚炎の患者様はどなたもほぼ同じ内 容の治療(ステロイドの塗り薬、内服)を受けておられますが、漢方では体質や症状が異なれば、人によって全く違う薬が処方されることもありえるわけです。この漢方の治療方式は近年、西洋医学で言われるオーダーメイド医療(個人個人にあったオーダーメイド的な治療を行なうこと)にも相通じるものがあります。
ただ西洋医学と異なり、その効果は科学的に証明されていないことも多いです。しかし、漢方医療は2000年もの長い間受け継がれてきているわけで、その ように長い期間すたれずにいるということが、病気を治す力があることを示しているわけです。また最近では漢方はその効果を改めて認められてきており、大 学病院でも専門外来を設けているところもあります。私の母校である京都府立医科大学付属病院でも漢方外来がスタートしています。科学的根拠についても 研究がすすんでおり、ツムラがアメリカ消化器病学会に六君子湯が胃の運動を促進し逆流性食道炎に効果があるという発表をしています。
当院の漢方、西洋医学の考え
当院としては、診療において漢方、西洋医学のどちらか一方だけにこだわる必要はないと考えています。それぞれに長所、短所があるわけですから、患者様ごとに、また症状によって、適している方をつかうのが合理的だと思います。例えば癌についてはやはり西洋医学に軍配があがります。漢方でも癌が小さくなったと報告される薬はありますが、やはり早期発見、早期治療が原則であり、そのためには西洋医学のレントゲン検査、超音波検査、内視鏡検査などが力を発揮します。
逆になんとなく体調がすぐれないが、検査をうけても何の異常も見つからない場合などは西洋医学で治療するのは困難ですが、漢方であれば体質、症状から考えて薬を処方できるので改善が期待できます。また西洋医学の治療で改善しない、喘息、腰痛や関節痛、皮膚病などが漢方で非常によく効くといったこともしばしばみられます。 漢方はその性質上、西洋医学で治療困難な症状も含め、どんな症状に対しても効果が期待できます。漢方と西洋医学は対立するものではなく、互いに補い合うものであるとの考えのもと、当院では医療を行なっています。