人参湯(にんじんとう)

成分(生薬)
人参3、白朮3、甘草3、乾姜3
目標・適応症
虚弱な体質のものにつかわれることが多く、体を温める作用がある。疲れやすい、胃痛、下痢、嘔吐、唾液が多く出る、手足が冷えやすい、薄い尿が多く出るなどの症状が目標となる。診察所見として、腹部は軟弱無力で振水音を認めるものと、腹壁が薄くて固くベニヤ板のように触れるものとがある。舌は苔がなく湿っていることが多い。一般的には急性慢性胃腸炎、胃弱、胃液分泌過多症、胃潰瘍などに用いられることが多い。
治験例
(一)右上腹部痛
50歳女性。太って色白、筋肉は軟弱、主訴は半年前から右の脇下が痛み、何かつかえている気持ちである。1週間前からみぞおちが痛むようになり、放屁することが多くなった。腹部は一体に膨満し、振水音が著明である。冷え性であり、小便が近い。人参湯によって、みぞおちは爽快となり、体は軽くなって気分が良くなった。

(二)唾液分泌過多症
30歳女性。9ヶ月前から絶えず生唾が上がって、食事した後吐くことがある。また咽喉や胸がつかえたり、みぞおちがチクチク痛んだり、就寝中に胸が痛んだりするという。中肉中背でそれほど体力の低下は見えない。脈は沈んで小さく、みぞおちに圧痛がある。この患者には、口に唾液がたまる、夜小便におきるの2点を目当てに人参湯を投与したが、1ヶ月足らずでこれらの症状はすっかり良くなった。(山田光胤氏、薬局14巻1号より)