小青竜湯(しょうせいりゅうとう)

成分(生薬)
半夏6、麻黄3、芍薬3、甘草3、桂枝3、細辛3、乾姜1.5、五味子1.5
目標・適応症
あまり虚弱な体質のものには向かない薬。喘咳があり、泡沫水様の痰が良く出る、唾がわいてくる、水のような鼻水がでる、胃の調子が悪く、背中が冷える、尿の出が悪い、むくみなどの症状を目標とする。診察上は、脈は浮弱、胃部振水音を認めることもある。感冒、気管支炎、気管支喘息、気管支拡張症、肺気腫、浮腫、胃酸過多症、アレルギ―性鼻炎、関節炎で水のたまったものなどに用いられることが多い。
治験例
(一)気管支喘息
61歳男性。毎年10月から3月頃まで間断なく喘息の発作に苦しむという。筋肉のしまりのよい痩せ型で、ふだんよく水ばなを流していた。それが発作のときはひどくなり、また皮膚に粟粒大の痒みのある発疹が出たり消えたりする。この患者は4年間小青竜湯をのみ続け、発作は新築の旅館に泊まったときと、旅先で大酒をのんだときと2回しかでなかった。(大塚敬節氏、漢方診療30年より)

(二)クシャミの頻発するアレルギ―性鼻炎
50歳男性。この人は20年来クシャミが発作的に起こり、とめどなく頻発する。発作時は鼻がむずむずして、連続してクシャミが始まり、涙が流れ、鼻水が流れ、よだれがでて、顔中水をかぶったようになるという。急に冷えた空気を吸ったり、夜に寝巻に着替えたりすると起こる。冬が多いが夏でも起こる。毎晩ベッドに入るときは、ちり紙を枕元に置くが、眠りにつくまでにくずかごがいつもいっぱいになるという。小青竜湯を与えると、3日目から好転し、鼻紙がわずかですむようになり、2ヶ月の服薬ですっかりよくなり、以後数年になるが再発しない。(矢数道明氏、漢方百話より)

小建中湯(しょうけんちゅうとう)

成分(生薬)
桂枝4、芍薬6、大棗4、生姜4、甘草2、膠飴20
目標・適応症
普段から身体虚弱で疲れやすい人や、普段は頑丈であるが無理をかさねて、ひどく疲労しているような人に適している。腹痛、全身の疲労状態、精力の虚乏といった症状が目標となり、診察所見としては腹部に圧痛があり、腹直筋が拘攣しているもの、または腹部が軟弱であることもある。主に、虚弱児の体質改善、感冒の経過中に腹痛を訴えるもの、胃炎、腸炎、疲労状態などにつかわれる。
治験例
(一)虚弱体質
4歳の女児。生来風邪をすぐひく。扁桃腺が腫れて40度近い熱がでる。1年中これを繰り返していた。1夜に3~4回も失敗することがあり、汗がでる。昨年は風邪のあと咳が続き、小児喘息と言われた。時々お腹が痛いと訴える。またどこかへ旅行したり、親戚の家へ泊まったりすると必ず高い熱が出る。風邪をひくのが恐ろしくて外出をきらい、元気なく一人で家の中にこもりがちであった。痩せ型で顔色は青白く、腹は薄く腹筋が緊張している。小建中湯を与えたところ、服薬後風邪をひかなくなり、ひいてもすぐに治り、高熱は出なくなり、夜尿も次第に少なくなり、2ヵ月後には自分から外へ出て友人と遊びまわるようになった。腹痛も治り、性格も一変して陽気となり、顔色もよくなって太ってきた。(矢数道明氏、漢方の臨床11巻2号より)

十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)

成分(生薬)
人参3、黄耆3、白朮3、茯苓3、当帰3、芍薬3、地黄3、川芎3、桂枝3、甘草1
目標・適応症
虚弱な体質のものに使われることが多い。全身の衰弱が甚だしく、貧血し、皮膚はかわき、胃腸の力も衰え、熱のないものを目標とする。診察所見としては外見は痩せ、脈腹ともに軟弱である。一般的には産後、手術後の衰弱、熱性病後の衰弱など、全身の衰弱しているものに用いる。

四物湯(しもつとう)

成分(生薬)
当帰4、芍薬4、川芎4、地黄4
目標・適応症
男性にも用いられるが主に婦人に用いられる。婦人の諸疾患を治す聖薬とされている。貧血の傾向にあり、月経の不調があり、自律神経の失調などがあるものを目標とする。診察所見は皮膚は乾燥し、脈は沈んで弱く、腹は軟弱で臍の上に動悸が触れることが多い。一般的には月経異常、更年期障害、不妊症、産前産後の諸病、子宮出血、皮膚病などに処方される。
治験例
(一)血の道症
34歳女性。4年前2度目のお産後からこの病状が起こった。息苦しく、動悸を感じ、肩が凝り、腰は痛み、手足は冷え、全身がたまらなくだるい。だるくなるとはしを持つのもいやになり、憂鬱でなんともしようがない。時々足の裏に火がついたのかと思われるようにほてってくる。この4年間家事は一切他人任せである。診察すると、脈は沈んで微弱であり、腹は軟弱で、臍の付近に動悸と圧痛がある。また月経は極めて少ないという。四物湯を与えると、2ヵ月後には元気になり、家事も自分でできるようになった。(矢数道明著、漢方百話より)

桂枝湯(けいしとう)

成分(生薬)
桂枝4、芍薬4、大棗4、生姜4、甘草2
目標・適応症
普段からやや虚弱な体質のものに一般的に用いられる。寒気、体がほてる、頭痛、自然に汗がでてくる、体が痛いなどの症状を目標とし、診察所見としては脈は浮弱、舌や腹部には特記すべき所見はない。主として、感冒、神経痛、リウマチ、頭痛、寒冷による腹痛、神経衰弱、虚弱体質などに処方される。
治験例
(一)頭痛
21歳の男性、感冒にかかり葛根湯をのんだが汗がじめじめと出てとまらず、頭痛、さむけがして、脈は浮弱であった。薬を桂枝湯に変えて、一回分服用すると、汗はやみ、のぼせがなくなり、頭痛も拭うように治った。(矢数道明氏、臨床応用漢方処方解説より)

葛根湯(かっこんとう)

成分(生薬)
葛根8、麻黄4、大棗4、桂枝3、芍薬3、甘草2、乾姜1
目標・適応症
体質は虚弱ではなく、ややしっかりとした体格のものに一般的に用いられる。体がほてる、寒気、肩こり、汗はあまり出ない、などの症状があり、診察所見としては脈は浮で力があるが、舌や腹部には特記すべき所見はないものが目標となる。主として、感冒、肩こり、五十肩、蓄膿症、中耳炎、腸炎の初期に処方されるが、皮膚炎、湿疹、蕁麻疹などにもつかわれる。
治験例
(一)感冒頭痛
59歳の男性。充実した頑健な体質であるが、感冒にかかり、微熱がでて、頭痛、寒気、肩がこるなどの症状があった。脈は浮で力があった。葛根湯を服用したが良くならず、さらにもう一服のんで、熱い鍋を食べたところ、頭痛、寒気、肩こりはたちまちなくなった。(矢数道明氏、臨床応用漢方処方解説より)

(二)喘息
一人の婦人があって、秋になるとはげしい喘息がおこる。発作が起こっているうちは動くことができず、少しでも身を横にすると喘鳴と動悸が強くなり、背中から首にかけて板のように固くなり、痛くて振り向くこともできない。葛根湯を服用させると、たって歩くことができるようになり、続服させると全治した。(原南陽翁、叢桂亭医事小言より)

黄連解毒湯(おうれんげどくとう)

成分(生薬)
黄連1.5、黄柏1.5、黄芩3.0、山梔子2.0
目標・適応症
皮膚病、皮膚掻痒症、蕁麻疹、めまい、ノイローゼなどに用いられることが多い。目標は実証で腹に力があり、脈も十分力があって、熱はあるが沈の傾向を帯びたものである。一般雑病のうち炎症と充血のため顔色が赤く、のぼせ、不安焦燥、心悸亢進の気味があり、出血の傾向を有するものに用いる。不眠症に用いる時は頭がさえてなかなか眠れない、気分が落ち着かず、いらいらする、のぼせるなどの症状を参考にする。高血圧、更年期障害などの不眠に使われることが多い。

黄連湯(おうれんとう)

成分(生薬)
半夏6、乾姜3、人参3、甘草3、大棗3、黄連3、桂枝3
目標・適応症
半夏瀉心湯と似ている。すなわちその黄芩のかわりに桂枝が加わったものである。心窩部(みぞおち)のあたりのつかえ感、吐き気、嘔吐、食欲不振、口 臭、のぼせる、などの症状を目標とし、診察所見としてはみぞおちに圧痛があり、舌に白苔がついていることが多い。一般的には急性胃炎、急性腸炎による腹 痛、嘔吐、下痢、胃酸過多症、二日酔いなどに用いられることが多い。