葛根湯(かっこんとう)

成分(生薬)
葛根8、麻黄4、大棗4、桂枝3、芍薬3、甘草2、乾姜1
目標・適応症
体質は虚弱ではなく、ややしっかりとした体格のものに一般的に用いられる。体がほてる、寒気、肩こり、汗はあまり出ない、などの症状があり、診察所見としては脈は浮で力があるが、舌や腹部には特記すべき所見はないものが目標となる。主として、感冒、肩こり、五十肩、蓄膿症、中耳炎、腸炎の初期に処方されるが、皮膚炎、湿疹、蕁麻疹などにもつかわれる。
治験例
(一)感冒頭痛
59歳の男性。充実した頑健な体質であるが、感冒にかかり、微熱がでて、頭痛、寒気、肩がこるなどの症状があった。脈は浮で力があった。葛根湯を服用したが良くならず、さらにもう一服のんで、熱い鍋を食べたところ、頭痛、寒気、肩こりはたちまちなくなった。(矢数道明氏、臨床応用漢方処方解説より)

(二)喘息
一人の婦人があって、秋になるとはげしい喘息がおこる。発作が起こっているうちは動くことができず、少しでも身を横にすると喘鳴と動悸が強くなり、背中から首にかけて板のように固くなり、痛くて振り向くこともできない。葛根湯を服用させると、たって歩くことができるようになり、続服させると全治した。(原南陽翁、叢桂亭医事小言より)

黄連解毒湯(おうれんげどくとう)

成分(生薬)
黄連1.5、黄柏1.5、黄芩3.0、山梔子2.0
目標・適応症
皮膚病、皮膚掻痒症、蕁麻疹、めまい、ノイローゼなどに用いられることが多い。目標は実証で腹に力があり、脈も十分力があって、熱はあるが沈の傾向を帯びたものである。一般雑病のうち炎症と充血のため顔色が赤く、のぼせ、不安焦燥、心悸亢進の気味があり、出血の傾向を有するものに用いる。不眠症に用いる時は頭がさえてなかなか眠れない、気分が落ち着かず、いらいらする、のぼせるなどの症状を参考にする。高血圧、更年期障害などの不眠に使われることが多い。

黄連湯(おうれんとう)

成分(生薬)
半夏6、乾姜3、人参3、甘草3、大棗3、黄連3、桂枝3
目標・適応症
半夏瀉心湯と似ている。すなわちその黄芩のかわりに桂枝が加わったものである。心窩部(みぞおち)のあたりのつかえ感、吐き気、嘔吐、食欲不振、口 臭、のぼせる、などの症状を目標とし、診察所見としてはみぞおちに圧痛があり、舌に白苔がついていることが多い。一般的には急性胃炎、急性腸炎による腹 痛、嘔吐、下痢、胃酸過多症、二日酔いなどに用いられることが多い。

漢方診療をうける時の注意点は?

漢方診療では患者様の体質を正確に判断する必要があります。このためには現在困っておられる症状を含めて、他に気になる症状も全て教えて頂くことが重要で す。これはどんな些細なことでもかまいません。他の医療機関で問題にされなかった症状も含めます。こういったことが正しい漢方薬の選択、処方につながるの です。

またこちらが漢方薬を処方させて頂いたら、処方された日数分をきちんとのんでもらうことも大切です。効果がないからといって2-3日で止めてしまわ れる方もおられますが、これではその薬が本人にあっていないのか、薬の量が足りないせいで効果がないのか分かりません。そして、効いたにせよ効かなかった にせよ再度診察を受けて頂くことです。漢方薬は膨大な種類があり、真にその人にあった漢方薬を見つけ出すには試行錯誤が必要な場合もあります。ある程度時 間を頂ければ、多くの方は症状が改善しておられます。

漢方薬は癌にも効果があるの?

漢方薬をのんで癌が消えたとか、小さくなったとかいう報告は確かにあります。しかし、その報告は稀であり、また実際に漢方が癌に作用して小さくなったかどうかには疑問があります。よって当院では、癌に対する治療は西洋医学的な外科的手術や抗癌剤、放射線による治療をお勧めします。癌治療での漢方の役割は、患者様の弱った体力を手助けするような補助的な役割と考えて下さい。癌に伴う様々な症状や、抗癌剤の副作用などに対してなら漢方薬は効果を期待できます。

但し、癌が進行して西洋医学的に治療が困難である場合は、漢方や健康食品による治療は否定しません。これらを否定してしまうと、患者様の希望を全て奪うことになります。 かし、癌を患っている方の弱みにつけこんで、効果があるかどうか疑わしいものを高額な値段で売りつける輩もおりますのでご注意下さい。

漢方薬は長くのまないと効果がないの?

よく漢方は長くのまないと効果がないという誤解がありますが、そんなことはありません。もちろん慢性の疾患や体質改善を狙っての処方では長期にのまないと効果が分かりにくいこともありますが、急性の疾患などではのんで1~2時間位で効果がわかることもあります。ただ、薬がその人にあっているかどうかは2-3日のんでも分からない場合も多く、最低1週間位のんでから判断することが大事です。(もちろん、薬をのんで体調が悪くなった場合は、のむのを止めて早めに申し出て下さい。

漢方に副作用はないの?

副作用のない薬はありません。これは健康食品にせよ、サプリメントにせよ同じです。ただ、西洋医学の薬に比べて副作用の頻度は低いと言われており、使い方を間違わなければ安全な薬です。もし薬を服用して体調が悪くなった場合、その薬は体にあっていない可能性がありますので早めに申し出て下さい。

漢方はどんな症状に効くの?

漢方はどんな症状にでも効果が期待できますが、高血圧、糖尿病などは西洋医学の方が効果が優れていることが多いため、これらの疾患には西洋医学の薬をお勧めします。逆に得意な分野としては慢性の胃腸障害(腹痛、下痢、便秘)、頭痛、めまい、肩こり、冷え性、腰痛、関節痛、神経痛、更年期障害、虚弱体質の改善などです。また喘息、慢性関節リウマチ、アトピー性皮膚炎などの難治性の病気にも効果を認め、古人の知恵には驚かされます。最近では肥満にも効果があると言われています